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現状とこれからを考えるために!耐震補強工事の豆知識


全体の28.1%?意外と進んでいない耐震補強工事



阪神大震災、中越地震、東日本大震災、熊本地震など、この20年を通じて起きたいくつも悲惨な地震への反省、そして今後高い確率で起きると予測されている南海トラフ地震などへの対策から、現在耐震補強工事が求められています。

そうした状況を踏まえ、政府は昭和56年から段階的に建築基準法における耐震基準を見直してきました。しかし、日々ニュースなどで多く耳にする耐震工事ですが、意外と進んでいないことが課題としてずっとあげられてきました。

たとえば、平成23年9月から平成27年3月までに耐震診断を行った家のうち、耐震性を備えていないと診断されたのは93.6%でした。

しかし、すべての調査対象の家で耐震補強工事を行った割合はわずか28.1%で、特に倒壊の可能性が高いと診断された家においては、30.3%に過ぎませんでした。このことから、未だ巨大地震による倒壊リスクの高い住居が数多く残されていることが分かります。

耐震補強工事を行うにあたってそれらを阻害している要因としては、金額的要因やその必要性が理解されていないことが指摘されています。耐震補強工事は平均で百数十万円ほどかかると言われており、金額的負担の大きさは言うまでもありません。

そんな中でさまざまな耐震補強に関する助成金が整備されています。地域ごとに助成金額や条件などは異なりますが、多くの自治体において耐震診断は無料化されています。金額を見て尻込みする前に、まずは診断を受けることが大切です。



古民家の地震リスク



現在、日本では空き家が増加しています。平成25年度の土地統計調査によれば、空き家率は13.5%を超えており、また野村総研によれば2023年には21%に拡大する可能性があります。

空き家がこのように増加する中、全国的に空き家を利活用する動きが広がっています。その中でも特に古民家は人気が高く、最近では京都などを中心に古民家を改装したカフェやシェアハウス、コミュニティースペースなどが多くつくられています。また、近年空き家バンクなどの仕組みや、空き家利活用への補助金なども充実し始め、ますます古民家再生を行う環境が整備されつつあります。

しかし、こうした古民家は現代の建築技術によって建てられた建築物とは大きく違い、多くの場合耐震補強が必要と言われています。では、具体的になにが問題なのでしょうか。

古民家の多くは、現代の家とは違い、壁が少なく非常に広い間取りであることが特徴です。しかし、現代建築においては、耐震性の大きな要素の一つは壁であると考えられています。壁の多さが、家の強度を保っているのです。古民家における補強を考える際には、まずこちらが一つのポイントとなります。

次に、屋根の重さです。古民家ではご存知の通り瓦屋根が主流です。そのため非常に屋根が重く、屋根が落ちやすいなど、そのことが耐震に大きく関わっています。

一方で、古民家に特徴的な建築構造は、耐震に対して強いとも言われています。たとえば、自然木を丸太のまま用いた大きな梁や、組物など、過去の技術の中には、すでにその優れた点が評価されているものも多く存在しています。しかし、この他さまざまな古民家に特徴的な建築法についてはまだ全体的に研究が十分に進んでいるとは言えず、まだまだその効用についてはきちんとした評価ができる状態ではありません。



倒壊のリスクはどれくらい存在する?



関東大震災をきっかけに設置された耐震基準は、昭和53年に起きた宮城県沖地震をきっかけに大きく見直されました。そしてさらに阪神大震災を期にさらに見直され、現在の基準に至っています。

では、今後このような巨大地震の起こる確立はどの程度存在するのでしょうか。近年頻繁に指摘されている通り、南海トラフ巨大地震は、100年から150年の周期性のあるものだとされています。そして、東日本大震災を踏まえて見直された想定では、マグニチュード8から9、最大マグニチュード9.1の巨大地震がこの30年のうちにおきる確立が70%とも80%とも言われています。

この地震の規模は28万人以上が亡くなったスマトラ沖地震と同程度のもので、死者数は32万人、およそ250万棟の建築物が全壊すると予測されています。

このような巨大地震に最大限備えるためには、やはり耐震補強工事が非常に大切となります。しかし、どの程度補強すれば大丈夫と言えるのでしょうか。

残念ながら、決してこれで大丈夫ということはありません。2016年の4月に発生した熊本地震では前震と本震で最大震度7を観測し、最新の耐震基準に沿って建てられた家が倒壊するケースが観測され、現在その原因を巡って研究が行われています。過去の基準見直し例を見ても、その都度例外や足りない部分などが発覚し、それを乗り越える形で次の基準が作られています。

耐震工事はすれば大丈夫というものではありません。もちろんしないよりは当然安全性は格段にあがりますが、それでも最終的に自分の身を守るのはその人自身の心がけです。

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